スコットランドのタータン織物。縦横のストライプが造る格子柄とクランの象徴としての役割。
スコットランドといえば、タータン織物が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
タータン織物は、その独特な模様とクラン（一族）の象徴として広く知られています。
しかし、タータン織物にはどのような特徴や技術、歴史があるのでしょうか。
今回は、スコットランドのタータン織物について、その魅力を探ってみたいと思います。
スコットランドのタータン織物。縦横のストライプが造る格子柄とクランの象徴としての役割。
タータン織物の特徴
タータン織物とは、特定のパターンと色の組み合わせで構成される織物です。
パターンは、横と縦に交互に現れる色の帯（ストライプ）からなり、その幅や色数、配置などによって無数のバリエーションがあります。
色は、赤や青、緑、黄色などが多く使われますが、白や黒、紫やピンクなどもあります。
タータン織物は、古代スコットランドの部族やクランごとに異なるデザインがあり、それぞれが特定の一族や地域のアイデンティティを表しています。
独自のパターンと色彩によって、クランの結束や帰属意識が表現され、スコットランドの人々にとって重要な象徴となっています。
例えば、マクドナルド・クランは赤と黒を基調としたタータンを用いており、マッキントッシュ・クランは青と緑を基調としたタータンを用いています。
タータン織物は、主にウールで作られますが、コットンやシルクなども使われます。
ウールは保温性や耐久性に優れており、スコットランドの寒冷な気候に適しています。
また、ウールは染めやすく色鮮やかなタータンを作ることができます。
タータン織物の技術
タータン織物は、伝統的な手織り技術を使用して作られます。
職人たちは、特定のパターンを再現するために織り機や模様の配置に細心の注意を払いながら作り上げます。
また、伝統的な染色技法も使用され、天然素材や植物の染料が使われることがあります。
天然素材や植物の染料は、スコットランドの自然環境から得られるものであり、その土地土地の特色を反映しています。
意識的に分けていたわけではないものの、地域ごとに染色に使用される植物が異なるため、色合いや風味に違いがあります。
その違いを用いて、クランを区別していたともいわれます。
また、染料によっては時間と共に色が変化することもあります。これは、タータン織物が生きている証拠だと言われています。
タータン織物の歴史
タータン織物は、スコットランドの歴史や文化と深く結びついています。
特に、16世紀から18世紀にかけてのジャコバイト反乱時やハイランド清教徒の抵抗運動などの出来事において、タータンはスコットランドのアイデンティティや抵抗の象徴として用いられました。
ジャコバイト反乱とは、スコットランド王家であるステュアート家の王位復帰を目指す一連の反乱であり、ハイランド清教徒とは、スコットランドのハイランド地域に住むプロテスタントの人々であり、イギリス政府による弾圧に対して抵抗しました。
タータン織物は、これらの反乱や抵抗の際に、クランの所属や忠誠を示すために着用されました。
また、タータン織物は戦闘や狩猟などにも適した服装であり、機能性や実用性も高かったです。
しかし、1746年にジャコバイト反乱が鎮圧された後、イギリス政府はタータン織物の着用を禁止する法律を制定しました。
これは、タータン織物がスコットランド人の反英感情や民族意識を煽ると考えたためです。この法律は36年間続きましたが、1782年に撤廃されました。
その後、19世紀にスコットランドのハイランド地域が観光地として人気を集めるようになると、タータン織物はさらに注目を浴び、スコットランドの象徴的な存在となりました。
特に、ヴィクトリア女王がスコットランドを訪れてタータン織物を着用したことで、タータン織物はファッションや王室の間でも流行しました。
また、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、タータン織物は海外にも広まり、アメリカやカナダなどの移民先でも着用されました。
現代のタータン織物
現代のスコットランドでは、タータン織物は民族衣装や公式のイベントでの着用に限らず、日常的なファッションやインテリアデザインにも広く取り入れられています。
タータン柄のスカートやジャケット、バッグなどは、スコットランドの文化と伝統を象徴するアイテムとして人気があります。
また、タータン柄のクッションやカーテンなども見られます。
タータン織物は、その独自のデザインと歴史的な意義によって、スコットランドの人々や訪れる人々にとって特別な存在です。
その鮮やかな色彩とパターンは、スコットランドの美しい自然環境や豊かな文化を反映しており、永く愛され続けています。
