モロッカンラグ。イスラム、アフリカ、ヨーロッパなど多種の要素と種類を持つ織物。

 

モロッコは、アフリカ北西部に位置する国で、地中海や大西洋に面しています。

モロッコの文化は、アラブ、ベルベル、アフリカ、ヨーロッパなどの様々な要素が混ざり合って形成されており、その多様性は織物にも表れています。

モロッコの織物の中でも最も有名なものが、モロッカンラグと呼ばれる敷物です。

色鮮やかで幾何学的な模様が特徴的で、その種類も複数の文化を背景とした多種にわたり、世界中のインテリアやファッションにも影響を与えています。

この記事では、モロッカンラグの特徴や技術、歴史について紹介します。

モロッコの絨毯店
モロッコの絨毯店

モロッカンラグ。イスラム、アフリカ、ヨーロッパなど多種の要素と種類を持つ織物。

モロッカンラグの特徴

モロッカンラグは、一般的に羊毛で作られており、手織りで製作されます。

羊毛は、モロッコの気候に適応した羊から採取されるため、柔らかくて暖かく、耐久性も高いです。

また、羊毛は天然の染料で染められるため、鮮やかな色合いが得られます。モロッカンラグには、赤や青、黄色、緑などの色が多く使われています。

モロッカンラグの模様は、主に幾何学的な形や線で構成されています。

これは、ベルベル人やイスラム教の影響によるものです。

ベルベル人は、自然や神々への敬意を表すために、織物に幾何学的な模様や動物や人間の姿を描きました。

イスラム教では、偶像崇拝を禁じているため、動物や人間の姿は織物に描かれなくなりました。

代わりに、アラビア文字や幾何学的な模様や植物や花のモチーフが多用されるようになりました。

 

モロッカンラグの模様には、さまざまな意味が込められています。例えば、

– ダイアモンド:女性の美しさや妊娠を象徴する
– 目:邪視から身を守るための護符
– 三角形:男性と女性の関係を表す
– 交差する線:家族や部族の絆を表す

などです。また、織り手の個性や感情も模様に反映されるため、同じ模様でも微妙な違いがあります。

 

モロッカンラグの種類や技術

モロッカンラグは、その製法でいくつかの種類に分かれます。

人気のものは、アジラルラグ、キリムラグ、ブシュリットラグ、ベニワレンなどです。

 

アジラルラグは、モロッコのアジラル地方で作られるラグで、羊毛と綿の平織りの織物です。

アジラルラグは、自然な染料を使用して染められることが多く、その色使いは大胆で明るく、非対称なデザインが特徴です。

また、上質な羊毛が使用されるため、非常に柔らかく暖かい仕上がりとなります。

 

キリムラグは、平織りの低いパイルのラグです。

キリムラグ自体は、中東から中央アジアにかけての地域で作られるため、モロッコに限らず、トルコなどでも作られています。

モロッコのキリムラグは、ベージュ系の中性的な色をベースに青~赤の鮮やかな色を追加または刺繍されたものです。

モチーフは伝統的な図柄や古いシンボルから派生したものが多く、幾何学模様の施されたものが主流となっています。

 

ブシュリットラグは、モロッコのベルベル族の女性によって作られるラグです。

その名前はアラビア語で「布切れ」または「古着の切れ端」を意味する「bu sherwit」に由来します。

他のモロッコのラグが羊毛で作られるのに対し、ブシュリットは手持ちの材料、古着や他のラグの残りなどから作られます。

 

ベニワレン(ベニ・ウアリン)は、モロッコのベルベル人(Berber)の部族であるベニ・ウアリン(Beni Ourain)によって手織りされる伝統的な敷物です。

ベニワレンは、モロッコの中央部の高地に住む部族で、彼らの織物は数世紀にわたって作られてきました。

ベニワレンの敷物は、高品質の羊毛を使用しており、柔らかくて暖かい特徴があります。

また、特徴的なアイボリーやクリーム色の背景に、幾何学的な黒い線やダイヤモンド形の模様が施されています。

 

 

モロッカンラグの歴史

モロッコでは、紀元前から布地作りが行われており、その中でも最も古いものがベルベール人(Berber)によって作られた毛皮や羊毛の織物です。

ベルベール人は、モロッコの先住民族であり、独自の文化や言語を持っています。

彼らは、自然や神々への敬意を表すために、織物に幾何学的な模様や動物や人間の姿を描きました。

 

7世紀には、イスラム教がモロッコに伝わり、イスラム美術の影響が強まりました。

イスラム教では、偶像崇拝を禁じているため、動物や人間の姿は織物に描かれなくなりました。

代わりに、アラビア文字や幾何学的な模様や植物や花のモチーフが多用されるようになりました。

 

20世紀後半からは、モロッカンラグは世界中で注目されるようになりました。

特に1960年代から1970年代にかけては、アメリカやヨーロッパの芸術家やデザイナーがモロッカンラグを愛用しました。

画家のヨハネス・イッテンや建築家のル・コルビュジエも使用していたと言われています。

 

 

モロッカンラグは、モロッコの織物文化の一部であり、その美しさと独自性から国際的な人気を集めています。

モロッコの風土や文化、ベルベル人の伝統技術、イスラム美術の影響が絶妙に融合したモロッカンラグは、独特な魅力を持ち、インテリアやファッションにおいて特別な存在となっています。

 

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